「お金と幸福の関係」子どもに何をどう教える?
「子どもには小さい頃から、生きていく上で大切なお金のことをきちんと学んでほしい。」
これは、講座を受けに来ていただいたほとんどの方の、講座受講を決めた最初の動機です(事前アンケートより)。
でも講座の中で
「お金教育を通して子どもに学んでほしいことは何ですか?」
「なぜ、子どものうちからお金教育を、と思われているのですか?」
私がこのように質問すると、幾つもの異なる答えが返ってきます。
ある方が、おっしゃいました。
うちは共働きで、家族の希望を満たせる十分な収入があります。贅沢な生活はしないものの、そんなに我慢せずに食べたいものを食べて、休暇にはある程度行きたいところに行くことができるので、経済的には恵まれている方だと思います。ある時、子ども(8歳)が、友達の誰々くんの家は、僕の家よりもお金がないのに、僕の家族よりも楽しそう、とポロっと言いました。わが子がこういう発言をしてしまうことに動揺しました。大人の想像以上に、子どもはいろんなことを見ているということに驚いています。どんなことを話しどんなふうに子どもに向き合えば良いのか迷っています。
まず、親の私たちが、子どものこういった言葉や問いに対する自分の考えや回答の内容を整理して持っておくことは大切ですね。
もちろん、人の価値観は多様であるため、正解は一つではありません。
自分の考えに自信がなければ、納得がいくまで紙に書き出すなどして熟考する必要があります。自分の外に正解を求めても、正解が見つからないということはよくあり、特にお金のことに関しては、ヒントを拾い集めながら自分で自分の価値観を研磨していくしかない。
※研磨する・・・精神、知識、能力などを錬磨すること。 みがきあげること。
この方の場合は、最初はお金の運用スキル(稼ぐ、貯蓄する、投資するなど) を小さい頃から身につけて欲しいと思っていたが、それ以上に大事なことがあるのかもしれないと思った、とおっしゃっていました。
子どもの金融教育というと、お金の運用スキルを学んで欲しいから、お小遣い制を始めたいなど、実践的なノウハウを知ろうとする方が非常に多いです。
ですが、本来の金融教育は、実践的な運用スキルの前に、もっともっと学ぶべきことがあります。
講座の中では、お一人お一人が、自身の考えを整理していけるよう、ヒントになるようなお話、そしてできる限り、研究結果や科学的根拠に基づいたお話をします。
ウェルビーイングとは?
米英の金融教育の本質は、ウェルビーイング教育であると言っても過言ではありません。
ウェルビーイングって何?
ウェルビーイング(英: Well-being)とは、誰かにとって本質的に価値のある状態、つまり、ある人にとってのウェルビーイングとは、その人にとって究極的に善い状態、その人の自己利益にかなうものを実現した状態である
ーWikipedia
ウェルビーイングとは、何も経済的なことに限ったものではなく、健康的で幸せな、心身ともに満たされた状態のことを表します。
しかし、ウェルビーイングを追求すると、誰もが必ず「お金のこと」にたどり着きます。最低限の生活が送れない、それほどにお金がなくても「幸せ!」と言い切れる人はそんなにいないでしょう。また経済的なストレスが不健康の一因になってしまうこともあります。
なぜ、米英の金融教育の本質は、ウェルビーイング教育であると言っても過言ではないのか?
簡単な言葉で言ってしまえば、
お金だけたくさんあっても「幸福感」に必ずしも直結しない
逆を言えば、
最低限の生活ニーズが満たされていれば、それ以上のお金がなくても「幸福感」は得られる
米英ではこれを前提に、金融教育にもウェルビーイングの概念を組み込んでいるということになります。
(ちなみにこれは、日本の金融教育にはない概念だと私は認識しています)
ウェルビーイングは、誰も取り残さない、多様性を尊重する概念です。人によって何に幸福感を感じるかが違うからです。これが、先に述べた「正解は一つではない」という部分につながります。
お金と幸福感との関係に関して、皆さんが考えを整理し価値観を研磨していけるよう、一つの方法として、ハーバード大学の有名な研究とその結果をご紹介します。
ハーバード大学が、1938年から85年もの間、2000人を超える人々やその子孫までを追跡した結果、人間が幸せを感じる「絶対条件」に辿り着いたと発表している。この研究については、ハーバード大学医学大学院・精神医学ロバート・ウォールディンガー教授のTEDトークや、著書『グッド・ライフ 幸せになるのに、遅すぎることはない』が話題になり大きな反響を呼んでいる。
85年にもわたる追跡研究で分かった「幸福の絶対条件」とは?
ウェルビーイングと金融教育
明日住む家がない、今日の夜食べるものがない状態。それでも「幸せ」だと思える人生を送りましょうと言うのは、正しい金融教育でないことは想像がつくと思います。
子どもの頃からの金融教育が目指すところは、そこではないし、それが金融教育ならば、私はこの分野に力を注いていないとも思うんです。
ただ!ウェルビーイングの概念なくして、米英の金融教育は成り立ちません。
もしウェルビーイングの概念がない金融教育ならば、わざわざ低年齢で金融教育を行う必要はなく、正直、高校生くらいからスタートしても良いのではないかと私は思ってしまうくらい。
子どもたちの明るく健全で幸せな未来のために、親の私たちが今日からできること。
私は、金融教育=ウェルビーイング教育とも言える米英の金融教育を、その中身をまずは知ることに大きな意味があると思っており、米英で育っていない日本人の方に伝えていきたい!そんな思いで活動しています。
お子さんが、国際社会・多文化社会でさまざまなバックグラウンドの人たちと上手にコミュニケーションを取っていくには、お金と幸福の関係について、確かな感覚を自分の中に育てていく
まとめ
- 一貫した対応を取ることが大切。「お金と幸福の関係」についてはっきりした答えを持っていなければ、まずは親が、自分の考えや価値観を研磨すること。
- 「お金と幸福の関係」について、正解は一つではないが、漠然と自分で考えるより信頼できる研究結果を参考にすると良い。
- 米英の金融教育は「ウェルビーイング教育」とも言えるため、米英の金融教育を知ることも、考えの整理につながりやすい。
人は、自分の視野の中(見えているもの)で物事を判断しがちですね。自分に見えているものは現時点での自分の視野・視座でしかありません。
何かを解決したい時、同じ視野で物事を考えていても同じ場所・同じ考えに留まるだけ。
自分の視野の外を知ることで、自分自身の中にある価値観ともより深く向き合えるようになり、冒頭の講座受講者のようなお悩みも綺麗さっぱり解決することがありますよ!
そのお手伝いをしています!
2024年秋、雑誌『CREA』にて当講座 「米英式 子どものお金の教育」が紹介されます(9月上旬発売予定)。掲載特典がありますので、ぜひチェックしてみてくださいね^^