お年玉で子どもは何を学ぶ?
大切な日本文化の一つであるお正月のお年玉。
日本在住者はもちろんのこと、日本在住に限らず、海外在住日本人家族や国際結婚家庭で毎日の生活がどっぷり日本というのでなくても、日本文化をお子さんに継承したり文化を楽しむという目的で、日本のお年玉体験を大切にしておられるご家庭もたくさん見受けられます。
1年に一度のこのときを楽しみにしている子もいれば、まだお年玉の存在を知らないとか、知っているけどもらったことがないという子もいますね。
さまざまな経済状況の家庭がある中で、お年玉を渡す余裕がない家庭がお金の教育ができないかと言えばそんなことはありません。
なので、お年玉をお金の教育の機会として見ることは、そこまで重要ではないけれど
ここでは、お金の教育の視点から、お年玉で子どもは何を学ぶのかということについて一緒に見ていきましょう!
お年玉をあげる目的
昔は、正月に歳神を迎える際に備えていた丸いお餅を、年長者が家族に分け与えていたのですよね。歳神へのお供え物としてのお餅のお下がりをもらうことで、1年間無事に過ごせるようにとの願いが込められていたそうです。
私の実家にも神棚があり、大晦日には祖父母や親が一生懸命に掃除をしていたのをよく覚えています。
餅を分け与えていたのが始まりで、その後、高度経済成長と共に、家族が大家族から核家族になったり若者が地方から都会へと移り住むようになったことで、お餅を分け与えることが難しくなってきた… だからお金(現金) に変わっていったのが、現在のお年玉に至るまでの歴史というふうに伝えられています。
そんなお年玉文化ですが、近い将来、現金や手で受け取れるもの(例えばギフトカードや図書券) ではなくて『仮想通貨』が主流になっていったりするのかな?もしくは親から子へ振り込みが当たり前になったり??なんて私は思ったりしてしまいますが…
自分で稼ぐ子や、おこづかいとかなら振り込みで良いけれど
親や誰か大人が、子どもにあげるという行為においては、やっぱり手にとって触れるもので心のやり取りをする、そんな部分は残っていってほしいなあと個人的にはそう思ってやまないです…。(これは個人の勝手な意見ですよ!お金リテラシーには関係ないのでサラッと流してください笑)
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さて、お子さんにお年玉をあげるとき、どんな気持ちで渡しますか?
お年玉をあげる理由は人ぞれぞれで全然良いと思いますが、お金があるだけ(もらっただけ)全部好きなように使いきって良い、と言い切れる人は実際にはそんなに多くないと思うんですね。
ほとんどの人は、できれば子どもにお金の大切さや価値もしっかり理解してほしいと心のどこかで望んでいるし、それは何もおかしくない。
でもそもそもお餅だった時代には、そこまでのことは考えなくて良かった。腐る前に食べないといけないし、どうせすぐになくなるものというか…笑
それがお金になったもんだから、本来のお年玉の目的があやふやになっていまったり
お正月だから子どもにお年玉を渡す→子どもはお年玉だからもらう
というふうに単純化されてしまって、
心のどこかで子どもにお金の大切さや価値もしっかり理解してほしいと願っていてるはずなのに、肝心な部分が省略された状態でこのへんのことが行われてしまう。
だから、お年玉をどんなふうに捉えてほしいと願っているのかが、伝えたつもりでも本当には真意が子どもに伝わっていない...
私はそんなふうに現代社会のお年玉事情を見ています。
クリスマスのプレゼントも同じかな、と感じることがあります。
最近はAIも盛んになってきたし、時短・効率化がどんどん進められているから、私たちは知らず知らずのうちに「省略する」ことに慣れてしまって、ここは省略しないほうがいいじゃないか?という部分まで省略していることにも気がつかないということもあるかもしれませんよね。
そして、お年玉の始まりは、1年間無事に過ごせますようにと願いを込めて渡されるお餅だったのに、それが現金になったばかりに
本来の願いとは別の、「お金の大切さや価値も理解してほしい」という願いも追加されたことにより、お年玉を渡したあとの子どものお金の使い方が気になってしょうがないいう現象が起こってしまうのかもしれません。
それは個人というより、社会現象かなと思ったりしています。
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ちなみにわが家は、お年玉というかたちで現金は渡していません。
渡さない理由は特にこだわったものはないし、「うちはお年玉はやりません!」みたいにすごい意見があるわけでは全然ありません^^、が、
日本人両親だけれども、生まれた時からアメリカ在住で祖父母や親戚とも遠く離れていてなかなかお正月にピンポイントで会える機会がなかった。それでなんとなく私たち家族だけでは超お正月モードにならなかった(笑)というのが一つと、
長女7歳のお正月にたまたま日本に居て、祖父母や親戚から初めて自分の手でお年玉袋に入ったお年玉を受け取りました!感動してた!
もう一つ私と夫にとっておそらくこれが一番の理由かな?というのが、クリスマスにとっておきのプレゼントをあげるので、小さい頃からクリスマスにもらったプレゼントを毎年とっても大切にしている感じがあり、そのすぐ後にくるお正月にお金をあげる気にならなかった…
というようなものだと思います。
それと、長女7歳ごろ、次女6歳半ごろからは子どものお金の管理システムが確立していて、子どもたちは普段からお金を受け取る機会があるので、6〜7歳以降については、お年玉が必ずしも現金である必要はないというのがわが家の状況かもしれません。
ここ2〜3年の理由としては、これが大きい気がします。
わが家は家族全員、読書をとても大事に思っていて(←特に夫と子どもたち。私は人生後半これからスタート汗)、読書 (と睡眠と運動) によって心身ともに健全でいられると思っている部分が強いので、その、家族の価値観にそったかたちで、お正月にはお年玉がわりに、「1年間、健全に過ごせますように」と親の気持ちを座って話し、現金ではなくて『図書カード(アメリカでは本屋さんのギフトカードのこと)』をあげています。
そして、何より、お年玉やお年玉がわりのものについては、「無駄遣いをしない」とか「もらったものを大事にする」という『しつけ」の部分』と『お金の教育』をごちゃ混ぜにしないように気をつけています。(誕生日プレゼントやクリスマスプレゼントも同じ)
これはわが家の生活環境での話しです。
お年玉でどうやってお金の教育をしたら良いですか?というご質問をいただくことがあるので、ここまでは私のお年玉への考え方を書きました。
各家庭それぞれ大事にしていることやお年玉をあげる意味を、一度立ち止まって考えてみるのも良いかもしれませんよね。
その上で、子どもにあげたお年玉(お金)を見ると、子どもの行動や、お金自体の価値までもが違って見えてくるかもしれないと思います。
日本文化を継承するという意味では、もともとはお餅のシェアだったんだなあと思うと、何を継承していくのか、また視点も変わってくると思います!
お年玉で子どもは何を学ぶ?
ここからは、私のお年玉への考え方ではなく、お金の教育の観点で書いています。
お年玉で子どもは何を学ぶ?
この問いに関する私の回答は、『お年玉を渡す側の人のお金の扱い方や価値観を学ぶ』です。そして、お金を介した人と人とのやり取りを学びます。
子どもは、いきなりお年玉だけでお金の知識やスキルを身につけることはできません。お年玉だけでお金の扱い方やスキル的なことを学ばせようとすればするほど、お金のことに関して誤解を持つことだってあります。
普段、家庭でどんなことを話し何が大事とされ、身近な大人がどんなお金の使い方をしているか?子どもを巻き込んだお金の管理システムが家庭でどのように行われどんなシステムが採用されているか?そういった日頃からのさまざまな要素が合わさって子どものお金の行動に表れます。
なので、「よし!お年玉でお金の教育をしよう!」と考えるよりは、お年玉は日頃のお金の教育の延長線上にある点の一つと思ってみてください!
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これが私が、お年玉の時期だからって、そのときに限って親子のお金の教育を焦って促さない一番の理由です。とても時間がかかることだから、受講生には「日頃どうするの?」という部分をたくさん伝えています。そして今年のお年玉で、子どものお金のことが思った方向に行っていなくても大丈夫なんですよ。子どものお金の教育は、日頃どうかということが大事。考えを整え習慣を作るには時間がかかるんです。基盤作りを焦らないことが大切です^^
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だから、今年のお年玉、なんだか思ったように子どもにお金の大切さを伝えられなかったな、よく考えたらきちんとした方針も管理システムも出来上がってないな〜と感じておられる方は、今から変えていけばいいのです!そして、結果は数年後、もしくは成人した後に出てくるかな、くらいに思っておきましょう!
【子どものお金の教育】とうたっているので、とても大切なことを最後に付け加えます↓
子どもも人間。親がこうしたからこうなる、これを言ったらこんな子になる、これをしなかったから終わりというほど単純なものではないし、個性もありますから「子どもをコントロールする」ことは推奨しません。私はこういう脅しのような教育スタイルが肌に合わないので、こういう内容も、受講生にはしないよ!
そして、親側もお金のことでモヤモヤしたりストレスを抱えて欲しくない!
ぜひ時間をかけて、お金のリテラシーを身につけられるようにゆったり楽しく環境を作っていくといういうふうに考えてみてくださいね。
まとめ
お年玉で子どもは何を学ぶ?
- お年玉を渡す側の人のお金の扱い方や価値観を学ぶ
- お金を介した人同士のやり取りを学ぶ
知っておくと楽なこと
- お年玉から(お年玉だけで) はお金の知識やスキルは学ばない
- 日頃どうなのか?が、子どものお年玉の行動に出やすい
- 「無駄遣いをしない」「いただいたお金を大切に扱う」は、お金の教育というよりは昔から誰もがやってきた『しつけの部分』として分けて考えるとやりやすい
- お金のリテラシーは基盤づくりに時間をかけることが大切
具体的な子どもへのお金の教育の方法や、私がおすすめする管理システムについては、米英式 子どものお金の教育 FLEP7入門編でお話しています。気になる方はこちらからチェックしてみてください!
今回はトピックからズレるので、お年玉を親が管理すること、貯金することなど具体的な内容には触れませんでしたが、これについても入門編で話しているので、悩んでいる、どうしたら良いかわからないという方は、入門編でカバーさせていただきます。その旨、お申し出ください!